書評・要約・雑記等

『女のいない男たち』村上春樹

今回は映画でかなり話題となっている村上春樹さんの『女のいない男たち』を紹介します。

『女のいない男たち』はどんな本?

何らかの理由で妻もしくは彼女のいない男がテーマとなっている短編小説が全部で6本収録されています。

1.ドライブ・マイ・カー:『文藝春秋』2013年12月号
妻を亡くした俳優が主人公。
主人公の家福は車で接触事故を起こし、免許停止になっている。
そこで運転手を雇うことになる。
雇い入れた運転手は24歳のみさきという女性。
北海道から来たというその女性はとても運転がうまく、無口だった。
家福はみさきと少しずつ話をするようになる。
無くなった妻が寝ていた男について。

2.イエスタデイ:『文藝春秋』2014年1月号
タイトルはビートルズのYesterdayからきている。
関西出身の関西弁を話さない主人公の谷村と東京出身の関西弁を話す木樽(きたる)との話。
主人公は早稲田大学文学部に通う二年生。
木樽は予備校に通っていた。
木樽には小学校のときから付き合っている彼女がいる。
幼馴染のガールフレンド。
木樽はある日こう言った。
「なあ、谷村、そしたらおれの彼女とつきおうてみる気はないか?」

3.独立器官:『文藝春秋』2014年3月号
渡会(とかい)医師について僕が語る。
渡会は52歳で未婚、同棲の経験も無い。
美容整形外科の医師で「渡会美容クリニック」を経営している。
高い年収を得ており、育ちも良く、上品で教養もあり、話題も豊富。
ジムに通って若い頃の体型を維持している。
これまで交際する女性に不自由したことは無い。
渡会は結婚して家庭を持つということを望まなかった。
そんな渡会が16歳年下の既婚者に恋をした。

4.シェエラザード:『MONKEY』2014年2月15日発行・Vol.2
セックスをするたびに、彼女は興味深いエピソードをきかせてくれた。
主人公の羽原はその女性を千夜一夜物語の語り手シェラザートと名付けた。
シェラザードは羽原よりも4歳年上の35歳で専業主婦だった。
シェラザードは週に二度のペースで羽原の住む『ハウス』を訪れる。
彼は外に出ることができない。(この物語でその理由は語られていません)
あるときシェラザードは「私の前世はやつめうなぎだったの」と言った。

5.木野:『文藝春秋』2014年2月号
主人公の木野はスポーツ用品を販売する会社に17年務めた。
出張から一日早く帰ってきた木野は自宅に戻ると同僚と妻が裸でベットに入っていることを目にした。
その後、離婚し、会社を退職した。
それをきっかけにバーを始めることにした。
店の名前は「木野」。
少しずつ客が入るようになり、坊主頭の男が良く来るようになった。
男はいつもカウンターの一番奥の席に座った。
その男は静かな声でビールを注文し、あとは黙って分厚い本を読んだ。
ある日店には坊主頭の男とダークスーツを着た2人の男の客がいた。
2人の男たちは言い争いを始める。

6.女のいない男たち:書き下ろし
夜中の1時に電話が鳴った。
低い声の男が一人の女性がこの世を去ったことを告げた。
「妻は先週の水曜日に自殺をしました、なにはともあれお知らせしておかなくてはと思って」
知らせを受けた僕は色んな思いを巡らせた。
彼女はこれまで僕が付き合った女性たちの中で、自殺を選んだ3人目となった。

読んで感じたこと

読んで何を思ったか。
正直に言うと初めての村上春樹作品がこの本でなくて良かったと思いました。
もしこの本が最初の小説だったら、私は村上春樹の本を今後読むことは無かったかもしれません。
やっぱり村上春樹は長編小説が面白い。

この本が面白くなかったわけではありません。
サクッと読める村上春樹作品としては良いと思います。

本人もこの本のまえがきで書いていますが、一曲をじっくり聴くというよりも、アルバムを聴くような感覚で読めます。

インスタントな村上春樹、そんな印象を受けました。

色んな主人公の立場になって読んでみる。
自分の今まで出会った女性と重ねて読んでみる。
色んな楽しみ方がある本だと思いました。

今日の一言

本を読んで記録しておいてあとで読み返すのは少し勇気がいりますが、面白いです。そのときに考えていたことや、悩んでいたことが思い出されます。

あとこのときは未熟だったな~と思います。
(いまもですが笑)

またこの文章を数年後に読んで、いろいろと思い出すんでしょうね。