書評・要約・雑記等

問題解決力を高めるには痛みに敏感であることが重要

人は痛みによって成長するというのは本当だと思う。
筋肉はトレーングによって意図的に傷つけることで、元の大きさよりも過剰に修復して肥大する。
おそらく感覚的な成長もこのような傾向があると思う。
まずは下記のエピソードをご覧いただきたい。

痛みを感じない少年

パキスタンである少年が14歳の誕生日に友人を驚かせようと、家の屋根から飛び降りて着地し、立ち上がった。
大丈夫だと言ったが、翌日に大量の内出血で死亡した。

この少年は一切痛みを感じなかった。
痛覚だけに障害があり、その他の身体的な問題はなかった。

同様の症状の患者を確認したところ、DNA解析によって「SCN9A」という遺伝子に変異が見つかった。
これはニューロンの電気信号伝達に欠かせないナトリウムチャネルの生成を指令するコードをもっている遺伝子だ。

このSCN9Aが発現するニューロンは、皮膚と内臓からの痛みの情報を伝えるものにほぼ限られている。
その結果、脊髄や脳に痛みを伝えるニューロンは存在するが、電気的に活動しない状態のため、神経は一見正常にみえるのに、痛覚は消失しているということだ。

痛みを感じない人は常にけがをしている。知らないうちに自分の舌を噛んだり、骨を折ったり、関節をすり減らしたり、ゴミの入ったままの目をこすったりしている。日常的な傷から感染症にかかりやすくなり、死に至る危険性が高い。

痛みは問題に気づくきっかけ

痛みを感じない人は体が傷を負っていても放置する。そして改善しないまま悪化し、最悪の場合、死につながる致命傷となる。

痛みは認知しなければ痛みではなく、その人の行動は変わらない。
それと同じように、日頃の問題も浮き彫りになるまで問題として認識されず、放置されたままだ。

人は問題を避けようとするが、問題の発見はとても重要だ。
人類は積極的に問題をみつけ、それに対処してきたからこそ発展してきたのだ。

痛覚と同様に、問題に気づく感覚も必須の能力だ。
そのためには現状を客観的にみることが重要だ。第三者的な視点。
自身や周囲の言動に目を配り、理想とギャップ(問題)を見つける感覚を研ぎ澄まそう。

参考文献

「触れることの科学/デイヴィッド・J・リンデン」