計画と罪悪感

「またやってしまった」
　朝起きると、知らない女の部屋にいた。外からは日差しが入り、おれを照らしている。たぶん、朝だ。頭が痛い。吐き気もある。よくこんな状態で女と寝ようとするもんだと、おれは他人事のように思った。
「起きた？」
　女はおれを見て言った。化粧が崩れていて、髪はボサボサ。だが、肉付きはちょうどよくて顔も悪くない。このままバイバイでは、もったいないと思った。
「起きるのがはやいね」とおれは言った。
「まさるくんが起こしたんだよ」
　女は優しい口調で言う。なんだか綺麗に整頓された部屋が思い浮かんだ。
「悪いね」と返事をする。
「なにも悪くないよ。ひとりでいるよりずっといい。また会えるかな。わたしは今から仕事に行かないといけない。あと一時間したら家を出るんだけど、大丈夫？」
「大丈夫」
　おれはそれだけいってベランダに出た。少し肌寒いが、それよりもタバコを吸いたい。それに、昨日のことを整理したいと思った。いろんなことがありすぎた。いろいろあって、無事に女は見つかって、おれはまんまと女の部屋に上がり込んだ。計画は成功したのだ。でも疑問はすべて解消されたわけじゃない。
「寒くない？」
　女はベランダに顔を出し、「はい」とブランケットをくれた。
　おれは畳まれたブランケットをそのまま脇に挟んだ。このくらいの寒さは問題ない。でも女の優しさは、ちょっとだけ嬉しかった。なんだか罪悪感が身体をめぐった。